光を当てると色が変わるフォトクロミズムは,研究者でなくても,子供でも見てわかる現象である。フォトクロミズムの歴史は古く,これまで多くの研究者を魅了してきた。フォトクロミック分子は単に色変化を利用する研究にとどまらず,物質の様々な性質を光で制御するための光スイッチ分子として広く利用されており,材料化学の重要な研究基盤となっている。
フォトクロミズムを深く理解するためには,有機化学の知識だけでなく,量子化学,光化学,反応速度論の知識も必要となるため,初学者にはハードルが高く感じられるかも知れない。しかし,フォトクロミズムはそれだけ奥が深く,また応用分野も多岐に渡っているため,研究対象としては興味が尽きることのない格好なターゲットである。
フォトクロミズムに関する書物の多くは,これまでに開発されてきたフォトクロミック分子の反応機構や,応用例の解説に終始したものが多いが,本書ではフォトクロミズムを理解するために必要な基礎を,幅広い視点から多角的に解説することに努めた。フォトクロミック反応は光化学反応であるため,電子励起状態の理解が求められる。そのため,本書ではフォトクロミズムの概要,分子軌道法,電子励起状態,ポテンシャルエネルギー曲線の解説から入り,オレフィンのトランス‐シス光異性化反応,光開環/閉環反応,光解離反応の基礎理論,生物が利用しているフォトクロミック分子について解説した。
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