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手塚治虫、江戸川乱歩、「神田川」(かぐや姫)から
ビニ本、自販機本、ブルセラ、フードルまで
“伝説”はこの街で生まれた。
この地を40年追い続けたノンフィクション作家が
満を持して放つ、東京の異界シリーズ第5弾!!
高田馬場には青春の屍が埋まっている。
駅前にそびえ立つ巨大な石棺のような複合型ビル・ビッグボックスは、過ぎゆく青春を追悼する墓碑銘だ。
高田馬場駅前広場は今日も若者たちで埋まり、夜中になれどもざわめきは消えず、咆哮が夜空に跳ね返る。
毎春、希望に燃えて大学に入る者、挫折を胸にしまい込み予備校に席を置く者、卒業してこの地を離れる者。恋を成就する者、恋に破れ失意のまま消えていく者。若者たちは集まり散じて青春を名残惜しむ。
私が初めてこの地を踏みしめたのは一九七四年、十八の夏だった。
高田馬場は私の青春時代から四十年以上におよぶ浮き沈みとともに、常に私に寄り添っていた。
私をとらえて放さないこの地には、いったい何が埋まっていたのだろう。
鶯谷・渋谷円山町・上野・新橋と東京の陰に咲く土地を歩き、過去を振り返り、そこで働く、生きる人々を追い求めた異界シリーズを書き下ろしてきた。
私にとって五冊目にあたる異界は、絶望や希望を抱きながら生きてきたこの土地である。
漫画の神様・手塚治虫は高田馬場の何に惹きつけられたのか。
「神田川」はいかにしてフォークの聖地となりしか。
江戸川乱歩が高田馬場で本業以外に営んだある仕事とは。
なぜ高田馬場にエロ本出版社が乱立し、栄華を極めたのか。
政財界人御用達と言われた高田馬場の「伝説の風俗店」とは。
「ブルセラ」と呼ばれる使用済み女性下着は、なぜこの街で売れつづけるのか。
駅前にそびえ立つ複合型ビル・ビッグボックスは何を見つめてきたのか。
陸軍の街として栄えた土地にいまも残るミステリーとは。
高田馬場で殺された悲劇の女優とは。
私の父はいったいこの街で何を夢見て、何を隠していたのか。
半世紀近く、この街をさまよい歩いた私自身の足跡を探ることが、高田馬場の知られざる姿を浮かび上がらせることになるだろう。
この街の磁力とはいったい何か、を。(まえがきより)
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