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平安時代後期に成立し、多数の諸本・膨大な異文が存在する『狭衣物語』。
三条西家本は、三条西実隆の息子で自身も多数の古典籍の書写や注釈をおこなっていた三条西公条によって、室町時代に書写されたと考えられる写本である。
室町時代においては理解が難しくなっていた平安時代の言葉を、書写当時(室町時代)の言葉に置き換えた本文を持ち、そこには原典を尊重するという意識とは遠く離れた書写態度が透かし見える。
本書は三条西家本をもとに校訂本文を作成し、物語内容の読解を促す梗概と注、特異な異同を取りあげる本文考を付すとともに、読みやすく充実した20のコラムを配置。
『狭衣物語』諸本の関係性のみならず、室町時代の書写と享受態度を考えるうえで、重要な役割を果たす一冊。
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