プラズモンは,現在,光化学の中で間違いなく最もホットなトピックのひとつである。化学を学ぶ読者の方であっても「プラズモン」と聞いて直ぐにステンドグラスを思い浮かべる人はあまりいないだろう。透明なガラスの中にちりばめられた金のナノ微粒子が示すプラズモンという現象がステンドグラスを綺麗に発色させている。そのように古くから知られているプラズモンがなぜ最新の光化学なのか,ということを平易に解説したのが本書である。
光が金のナノ微粒子に当たると表面の自由電子が光と共鳴して集団振動する。これがプラズモンであるが,この電子の振動運動が微粒子表面に「近接場」と呼ばれる新たな光を生み出す。振動運動は当てられた光が通り過ぎてもしばらく続くので,近接場は金のナノ微粒子に時間的,空間的に閉じ込められ,新たなナノ光源となって近くの分子を効率良く励起する。これにより,分子の蛍光やラマン散乱が増強するため,バイオ分野における応用が進んでいる。また,電子の集団振動は時間とともにばらけてくる。このときに金のナノ微粒子自身が励起され,ホットエレクトロンとホットホールと呼ばれるエネルギーの高い電子と正孔が生成される。これらを分離して利用すれば,酸化還元反応が誘起される。
本書では,プラズモンの原理や金ナノ微粒子の作製方法に加えて,プラズモンによる水の完全分解や空中窒素固定によるアンモニア合成などの応用例も取り上げている。
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