奈良絵本集 二

新天理図書館善本叢書

奈良絵本集

出版社よりお取り寄せ(通常3日~20日で出荷)
※20日以内での商品確保が難しい場合、キャンセルさせて頂きます

出版社
八木書店古書出版部
著者名
天理大学附属天理図書館 , 石川透 , 恋田知子 , 金光桂子
価格
36,300円(本体33,000円+税)
発行年月
2019年2月
判型
A4
ISBN
9784840695749

[1]舟のゐとく(江戸前期写、二軸)
 巻初で「世にすくれて 国土の重宝 万民のたすけとなるは 船舶に過たる物あらし」と舟のありがたさを述べ、中国古代における舟の起源を含む中国の故事二話、日本の故事六話を収める威徳説話集。謡曲や幸若舞曲、『太平記』等に典拠が確認でき、巻末には竜頭鷁首、軍船、つり舟等と物尽くしのごとく舟の種類が記される。箱蓋裏の極には「詞書飛鳥井雅章卿/土佐光成筆」とある。伝本は稀で、本文と絵を共に備えるのは、本書の他に國學院大學蔵本を知るのみ。

[2]常盤の嫗(江戸前期写、一軸)
 発心往生譚の形を取りながら、老いの繰り言の中に、人間の真の姿を感じさせる物語。夫に先立たれた常盤の嫗は、老いた身の儚さを嘆き、俄に発心念仏を始めるが、唱名の合い間には、あらゆるものを食べたがり、子に対する不平不満などを漏らしたかと思うと、自らの若い頃を懐かしむ。このような老人の寂しさ、俗念・煩悩に満ちた念仏ではあったが、嫗は念願通り往生を遂げる。独白の形を取り、滑稽味に溢れた七五調の文章は、御伽草子の中でも独自の世界を創り出している。

[3]小男の草子絵巻(室町末期写、一軸)
 出世・栄華を求め、都に上った身の丈一尺の小男が、観音菩薩の縁日で見初めた美しい女性と和歌の才能によって結ばれ、のちに小男は五条の天神に、女性は観世音菩薩として現れる。『一寸法師』と同様の小さ子説話で、身分の低い者が自らの才能で功を成すという、中世庶民の活気を感じさせる作品。また筋立てや歌の類似などから、その成立において『ものくさ太郎』と非常に近い関係にあることが認められる。4『小男の草子絵巻別本』に比べ、中世的な要素を多く持っており、諸本の中にあって比較的古い本文とされる。

[4]小男の草子絵巻別本(慶長十二年写、一軸)
 3『小男の草子絵巻』及び5『小おとこ』とは別系統の伝本で、他に早稲田大学本を知るのみ。最も大きな違いは、女性が清水観音から授かった打ち出の小槌で小男を打つところで目覚めると、小男は七尺余りとなっており、関白に見参して筑紫の国を給わった後、楽しみ栄えたという結末である。小男が五条の天神として現れる話は姿を消して、より物語的になっており、『一寸法師』は、この系統の作品の影響を受けたものだと推測されている。「ひろしまにてかきうつす也 慶長十二年ひのとのひつし二月五日」の奥書を持つ。

[5]小おとこ(江戸初期写、一冊)
 内容は3の『小男の草子絵巻』とほぼ同様。『小男の草子』『小おとこ』と呼称される作品は、身分の低い小男が和歌の才能によって美しい女性と結ばれる成功譚と同時に、のちには五条の天神となって現れるという本地物語でもある。卓越した和歌の才能は天神である菅原道真を想起させ、併せて身体の小さな少彦名命を祭神とするところから、五条天神が選ばれたものと考えられている。また、京に上った小男が奉公先を尋ねて歩く町家の門や、見初めた女房の住まいには、それぞれの紋を染め抜いたのれんが掛かっており

お気に入りカテゴリ

よく利用するジャンルを設定できます。

≫ 設定

カテゴリ

「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。

page top