取り寄せ不可
ウエディング・ドレスの仮縫いの最中、ふいに玄関のベルが鳴る。
脳腫瘍の手術を終え、結婚を間近に控えたヘレンが扉を開けると、
そこには婚約者の兄、精悍な印象のアレグザンダーが佇んでいた。
目が合って、視線が絡む。思わず吸い込まれそうな気がした。
「ヘレン。ようやく見つけた、僕のエンジェル」
なぜ懐かしそうに見つめるの? 会うのは今日が初めてなのに。
からかわれているのだろうとヘレンは思っていたが、
やがて、鋭い痛みが頭の芯を走り抜け、予期せぬ怯えが走った。
手術で失ったのかもしれない、記憶の奥に潜む、愛の予感に――
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