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1977年に『ものぐさ精神分析』として出版されて以来、
熱狂的な支持と一部の反対・批判にもさらされてきた「唯幻論」。
著者の岸田秀は本書の「あとがき」でこう書きました。
「いつ死んでもおかしくない歳になったし、記憶力や判断力が衰えてきたようなので、もう次の新しい本を書くことはないであろうという気がするから、ここで、わたしがどういうわけで、どういう道筋を通って唯幻論という説を思いついたかを説明し、唯幻論への批判に対してこれまで書いた反批判・反駁をまた改めてまとめて提示することにした」
著者の生い立ちから、子供時代の体験、そして学生時代のくも膜下出血。
家業の映画館を継いでほしい、という母親からの過度な期待と、 それにともなって現れたさまざまな強迫観念。
著者の人生行路と、唯幻論の理論的背景は密接につながっていました。
「献身的に尽くすのに肉体関係は求めない〈清らか〉な恋愛をしたいと考えていたのはなぜか」
「なぜ日本兵の死体の写真を見ると、ひどいショックを受けるのか」
著者のあくまで個人的な疑問点から構築されたのが 「性的唯幻論」であり「史的唯幻論」だったのです。
著者が「人生最後の本」として唯幻論の一部始終を書き下ろしで総括した本。
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