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本書は、南部アフリカ・ナミビア共和国に暮らすヘレロの人びとの美的センスと衣服をめぐるふるまい、そして現代生活に適合したファッションとして今日もなお革新され続けるロングドレスの創造過程を描き、一見「伝統」とは無関係の奇妙なスタイルがなぜ人々に愛され、誇りや楽しみを与えているのかを明らかにしようとするものである。
19世紀末から20世紀初頭にかけてドイツ帝国の植民地支配を受けたナミビア共和国。20世紀初頭には、バンツー系牧畜民であるヘレロ族ら先住民族に対して、ナチス・ドイツのホロコーストに先立つ20世紀最初のジェノサイドといわれる虐殺が行われ、ヘレロは人口の8割を失った。しかし彼らは、ドイツからの解放後も「敵」であった筈のドイツ人入植者に由来する衣服を着用し続けてきた。特にヘレロの女性は足先までのスカートに、何枚も重ね履きするペチコート、しまったウエストにふくらんだ肩という西洋由来のドレスの型を継承しながらも、重要な家畜であるウシの角に似せたヘッドドレス(オシカイバ)や、ヘレロ社会に伝わるオーラル・ヒストリーを象徴する色をドレスに取り込み、「自分たちの衣服」を形作ってきた。集団としての「ヘレロ」、そしてヘレロ固有のドレスが入植者を始めとするさまざまな人々との接触によって成型され、洗練され続けている過程を描く。
「他者」と共にあることで形づくられる「自己」の姿とは? そして、ヘレロ・スタイルに見られる複数の「自己」のあり方とは?
『サプール』やヨシダナギの写真集などをはじめとして、アフリカの人びとのファッションに関心の集まっている今日、アフリカ人の知られざる美意識をカラー写真とともに伝える。
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