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なぜ、イスラームは、“アッラー”のみを崇拝するのか?
人間と宇宙の存在を根底から問う〈存在一性論〉の巨匠、ヤコブ・べーメ、エクハルトに匹敵する知られざる知の巨人による神秘思想の到達点。本邦の一神教研究の新しい時代の幕開けを告げるイスラーム神秘主義思想の古典の最高峰の翻訳と解説。
【井筒俊彦の存在一性論の限界を剔出し、新たな普遍主義と文明共存の地平融合を創唱する中田考「末法の神学」所収】
著者ナーブルスィーは、18世紀オスマン朝シリアで活躍したイスラーム学者。当時のアラブ世界で隆盛を誇ったイブン・アラビー学派を代表する思想家であり、現代アラブにおいても彼の神秘主義詩は広く読まれている。その生涯を通し、思想書から、夢判断、旅行記まで200冊を超える著作をものにした。中世と近代の境目に生きたナーブルスィーはイスラーム学の革新に生涯をささげた最も独創的な思想家の一人である。
本書は、「存在一性論」理解の再考をせまり、イスラーム圏/非イスラーム圏、ムスリム/非ムスリムという二項対立を超え、全ての人間が共有するべき「神への信仰」のあり方を、イスラーム法の細則ではなく、自分の存在の“儚さ”の自覚から再構築する道を示す。
ダマスカスに一人の不信仰者がいた。私は彼の書簡に目を通したが、その内容は彼の目が隻眼であったように真っ黒であった。彼はいつもタバコを吸いながら、叡智の持ち主と自称していた。
これはナーブルスィーの風貌や人となりを窺い知ることができる貴重な証言である。タバコの煙を身にまといながら神の真理を語る隻眼の男……。いかにも神秘家といった出で立ちではないか。
ナーブルスィーは晩年、サーリヒーヤ地区に住処を移した。彼は最期まで精力的に執筆活動をつづけた。クルアーン解釈に対する注釈が彼の最後の大作であったと言われる。
彼は90歳でその生涯を閉じる。当時としてはとても長寿だった。彼が亡くなった日、街は悲しみに包まれ、みな喪に服し、店はみな戸を閉めたといわれている。現在でもシリアのダマスカスには彼の廟を中心としてモスクが建てられており、多くの参詣者が訪れている。
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