殺されたい、愛するお前に...。おお、これが究極の純愛というヤツなのか。
井原西鶴が1687年に描き出した、詩情あふれる華麗・勇武な男色物語が、遂に現代に甦る。
若衆と念者の「死をも辞さない強い絆」は、常に焦点ととして描かれる三角関係の緊張感とともに、長い間、誠の愛を渇望して止まぬ人々の心を密かに潤し続けてきた。
世界の奇書として名高い『男色大鑑』。全集でしか読めなかった作品群が、わかりやすい現代語と豪華漫画家陣[あんどうれい、大竹直子、九州男児、こふで、紗久楽さわ]の挿絵によって鮮やかに息を吹き返す。
天才、井原西鶴による300年前のストーリーが今ここに復活。魅惑の古典世界への道しるべが、ここに登場。古典文学は、ここから学ぶと絶対楽しい!
本書は『男色大鑑』八巻中、前半の武家社会の衆道に取材した作品四巻までを収録(後半の四巻は2019年6月に刊行予定)。
現代語訳は、若手中心の気鋭の研究者、佐藤智子、杉本紀子、染谷智幸、畑中千晶、濱口順一、浜田泰彦、早川由美、松村美奈。
●本文より
「今の思いはどうだ。これでも白状せぬか!」
と仰せられた。小輪は右手を差し出して、
「この手で兄分をさすりましたゆえに、さぞかしお憎しみは深いことでしょう」
と言うと、殿は飛びかかってその手も斬り落としておしまいになった。
〈巻2の2 傘持つても濡るる身〉より
「御貴殿を深くお慕いしております証拠には......」
と同時に肩を脱ぐと、
団之介の左腕には「嶋村」、内記の左腕には「藤内」と名字と名前をそれぞれ刺青して、
「御貴殿に逢わないうちからこの通りです」と見せた。
〈巻2の5 雪中の時鳥〉より
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