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「私は、ムスリムがイスラームの名によってイスラエル人や西洋人を攻撃したり傷つけたりしたことがない、などと言っているのではない。私が語っているのは、人がイスラームについてメディアを通して読んだり見たりすることのほとんどが、侵略行為はイスラームに由来するものであり、なぜなら〈イスラーム〉とはそういうものだからだと表象されている、ということである。その結果、現地の具体的なさまざまな状況は忘却される。言い換えれば、イスラームについて報道するということは、〈我々〉が何をしているかを曖昧にする一方で、このように欠陥だらけのムスリムやアラブ人とは何者であるかに脚光を当てる一面的な活動なのである」
『オリエンタリズム』の著者が、西洋(=アメリカ)のメディアに現れるフィクションとしての「イスラム」を描き、アクチュアルな問題を本書を通して世に問うたのは、1981年のことだった。そして現在、この傾向はますます振幅をきわめ、CNNを中心に放映されるイスラムの映像は、無批判のかたちで日本のテレビでも流され、あご髭のムスリム=テロリストという表象は、われわれの脳裏に刻まれている。
原著刊行16年後に出た新版に著者が寄せた50頁を超える序文を加えた増補版。SNS上のフェイクニュースなど、フィクションの拡がりが加速する現代においても示唆に富み、リップマン『世論』、オーウェル『1984年』に並ぶ、新たなるメディア論の古典である。
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