近年,統計局がe-statにより行政に関する各種統計データを積極的に公開している。このような動きを受けて,オープンデータに関する関心が高まっている。多くのオープンデータは地理空間情報と結びついており,地理空間データ分析を行うことで単純に統計データを眺めていただけではわからない空間上の関係を把握することができる。本書はそのような地理空間データ解析をRを用いて行うための入門書である。
第1章から第4章までの前半部では,Rを用いた基本的なデータ処理について解説している。一般的なRの入門書とは異なり,地理空間データを例にとって説明しており,具体的な分析を進める上でのデータの前処理を学べる内容となっている。
第5章から第9章までの後半部では,地理空間データ解析について,初歩的な内容から発展的な内容まで解説している。地理空間データ解析を支える理論について丁寧に解説されているのはもちろんのこと,実際のデータを用いたケーススタディも紹介されているため,読者は手を動かしながら理解を深めることができる。特に第9章はインターネットからリアルデータを取得し,地理空間データと結合させることによって,より踏み込んだ分析を行っている。現実のデータ分析の状況にかなり近く,本書の中でも特筆すべき章といえる。
また,訳者補遺として,現在主流のsimple featuresというGISデータの規格をRで扱うためのsfパッケージについて,付録で解説している。
本書を通じて,読者はR言語を用いた地理空間データ解析について包括的かつ具体的に学ぶことができる。地理空間データに関心のある読者が,その基礎から発展レベルの内容までを学ぶ際の必携の一冊といえる。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。