戯れの魔王

戯れの魔王

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出版社
文藝春秋
著者名
篠原勝之
価格
1,980円(本体1,800円+税)
発行年月
2018年11月
判型
四六判
ISBN
9784163909356

「KUMAさんの言葉の内側には 命へのぶ厚い歓喜がへばりついている」

――井浦新さん(俳優)推薦!



甲斐駒ヶ岳の山岳地帯に作業場をかまえ、鉄のゲージツ家として活動を続けてきたオレ。後期高齢者となった今は、畑に野菜を作って猿や鹿との攻防を繰り広げ、奈良東大寺から蓮の根をわけてもらい、美しい花を咲かせるのに熱中する日々だ。



そんな作業場へ、サングラスを掛けたスキンヘッドの男たちがやってきた。

「ああ、そうか。マロの一味だな」

「はい、弟子の舞踏者です」

目をやると、テンガロンハットに黒い革のコートをまとった「中央線の魔王」が、桜の木に寄りかかっていた。オレの作品のガラスの柱を舞台に使わせてほしいと言うのだ。

「クマ、一緒に踊るか」

「オレが? マロと?」

子どもの頃から歌も踊りも苦手なオレだが、マロに「ダイジョーブ、俺が演出するんだ。素直な躰ひとつ、お持ちいただけるだけでよろしいので」とまで言われて怯むのは「私に生きる才能は残っておりません」と白旗を掲げるようなものだ。・・・



こうして白塗りのメイクで、マロが率いる舞踏集団の初舞台を踏む「戯れの魔王」。

オッカサンの死を看取り、蓮の花が開いて散るまでを見守る「蓮葬り」。

毎朝、遥拝してきた甲斐駒ヶ岳の奉仕登山にいどむ「アマテラスの踵」。

山岳の作業場に迷い込んだ瀕死の仔猫を助ける「ささらほーさら」。

泉鏡花文学賞受賞『骨風』のKUMAさん、生きる実感に満ちあふれた最新小説集。

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