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「はじめに」より
精神分析は,フロイトおよび彼に影響を受けた多くの精神分析家たちが,膨大な臨床経験をもとに作り上げてきた実践の方法である。精神分析は,精神病理学のための理論的枠組みとしても大変有用であり,さらには哲学や文学などの人文科学諸分野においてもしばしば重要な参照枠とされている。
しかし私は,精神分析の本領はやはり臨床実践にあると考えている。本書では,理論的なことには深入りしすぎずに,臨床場面における精神分析的な実践の方法に焦点を当てて論じている。サイコセラピー(精神療法,心理療法,セラピー)の実践に携わる精神科医や心理士など,臨床実践に携わる方々に広く読んでいただければ幸いである。
第一部(セラピーに関する基本的な内容):1回45分ないし50分の時間をとって行うセラピーの経験が全くない方,および,そのような経験が多少はあるもののセラピーを精神分析的にするにはどうしたらよいのかが分からないという方を念頭に書いている。精神分析的セラピーの経験がすでにある程度ある方は,第二部から読み始めてもよいかもしれない。
第1章:精神分析の考え方を用いるということにはさまざまな可能性があることを示している。カウチを用いた本格的な精神分析以外にも,さまざまな治療法があるという考え方を紹介している。
第2章・第3章:精神分析的アプローチを特徴づける基本的な諸概念について概観している。第4章では,本格的なサイコセラピーを始めてみることの重要性について述べている。精神分析の習得にあたっては,座学ではなく実践こそが重要であるから実践をしてみないことには何も始まらないのだが,それをいかにして可能にするのかを論じている。
第二部(精神分析的アセスメントについて):
第5章:精神分析的セラピーを開始するまでの手続きを,精神分析的アセスメント面接の提案および実施,そしてセラピー構造の提示という一連の流れとして論じている。
第6章・第7章:精神分析的アセスメントの具体的なポイントについて述べている。網羅的であることよりも,重要であってもあまり取り上げられることのない事柄について触れることを心掛けた。
第三部(精神分析的セラピーの基本と方法)
第8章:実際に精神分析的セラピーを行っていく際の基本的な心構えを取り上げる。
第9章:解釈の技術について論じている。主に米国精神分析の中での議論を参考にしながら,解釈の技法の要点を説明している。解釈を生み出す際の発想の由来を,伝統的な精神分析理論の枠組みを十分に参照しながら説明するように心掛けた。
第10章・第11章:やや発展的な,そして挑戦的な内容となっている。精神分析的セラピーにおいて,近年解釈と共に,あるいはそれ以上に重要だと考えられるようになっているプロセス的側面の扱いについて述べている。ここでは,用いることのできる技法の幅を広げることを目指しているが,これらの章には発展的な内容も含まれているため,初学者には少し取り組みにくいかも
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