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六〇年安保に火をつけた男の全生涯
装甲車を乗り越えよ――。その男は国会前に群がった学生たちに咆哮すると、車の上から、警官隊にダイブした。全学連委員長・唐牛健太郎。六〇年安保はこの男の情念が火を付けた。
しかし、500万人の男を熱狂させた「政治の季節」は岸信介政権退陣とともに過ぎ去る。ともに闘った若者たちは社会に戻り、高度経済成長を享受した。
唐牛健太郎だけはヨットスクール経営、居酒屋店主、漁師と職を変え、日本中を漂流した。彼はなぜ、“何者か”になることを拒否したのか。ノンフィクション作家・佐野眞一が北は紋別、南は沖縄まで足を運んだ傑作評伝。
◎解説 「敗者への深い想い」 ――川本三郎(評論家)
【編集担当からのおすすめ情報】
「昭和の妖怪」岸信介と対峙し、「聖女」樺美智子の十字架を背負い、「三代目山口組組長」田岡一雄と「最後の黒幕」田中清玄の寵愛を受け、「思想界の巨人」吉本隆明と共闘し、「不随の病院王」徳田虎雄の参謀になった全学連元委員長、47年の軌跡です。文庫化に際しては、「盟友・西部邁の自裁死」についてや、青年期の唐牛に大きな影響を与えた「函館の番長」の追跡調査など、追加取材の上、大幅加筆しています。
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