「咳嗽」と「喀痰」を診る
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医療機関を受診する患者の主訴の中で、最も多いのが咳嗽と喀痰である。平成28年に厚労省が全国の世帯及び世帯員を対象に施行した国民生活基礎調査において、世帯員が有している自覚症状として、「せきやたんが出る」が、「腰痛」「肩こり」に次いで、男性では3番目に多かった。これは、慢性に咳嗽と喀痰症状を有しながら生活している国民が非常に多いことを示している。
喀痰は咳嗽と密接な関係にあり、気道過分泌の病態では、咳嗽と喀痰が生じる。気道過分泌が生じると、粘液線毛クリアランスの処理能力を超え、これを咳クリアランスが代償することで、湿性咳嗽が出現する。したがって呼吸器疾患の病態を理解し、治療戦略を講じる際には、咳嗽と喀痰を切り離して考えることはできない。咳嗽と喀痰は大変身近な症状であるが、一方では、呼吸器疾患における最も重要な症候である。咳嗽と喀痰の背景には多彩な病態が存在しており、その中には重症度や緊急性が高い疾患も含まれていることにも注意を要する。
今回、日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン 第2版」の改訂に際し、咳嗽と密接な関係にある喀痰も一緒に取り扱い、「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」として作成されることになったことは、極めて意義深い。咳嗽と喀痰の診療については、呼吸器内科を含む内科全域だけでなく、内科以外の多くの診療科が関わる可能性があり、最も読者の多いガイドラインの一つになると予想される。したがって、幅広い領域の読者がガイドラインの内容を理解し活用するために、咳嗽・喀痰診療のポイントをわかりやすく説明した解説書のニーズも大きいと考えられ、本特集の企画に至った。
本特集は、「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」を理解する一助となり、ガイドラインを効率的に活用できるようになることを目的としている。本書を先に一読してから、「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン」を開くことで、ガイドラインを即実践で使いこなせるようなると確信している。本特集が広く、学生や研修医から、コメディカル、非専門医、そして呼吸器専門医の方々まで座右の書として、ガイドラインとともに活用されることを願ってやまない。
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