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2016 年 9 月に『食品の変敗微生物』の初版が出版され,2017 年 12 月に『改訂増補食品の変敗微生物』が出版されたが,いずれも短期間で売り切れの状態となり,全国の多くの読者から感想や希望が寄せられた.その中でも,ウイルスとバクテリオファージの食品産業への影響についてのものが多かった.ウイルス等の微生物が食品に生育することにより食中毒だけではなく,香りの変化,色調の変化,組織の変化が生じ食品の価値を失わせる.食品により伝播し,ヒトの健康に被害を及ぼすウイルスにはノロウイルス,ロタウイルス,A 型肝炎ウイルス,E 型肝炎ウイルスがある.これらのウイルス性食中毒のウイルスは食品中では増殖せず,貝類やエビ類を除いて食品原材料中には病原ウイルスは通常存在しない.ヒトの汚物等が感染の原因となり,ヒトからヒトへの感染も多い.学校給食用のパンを食べて児童,教職員がノロウイルスに感染した原因がパン加工業者の従業員に由来する場合もある.
バクテリオファージの感染による問題は食品業界に多い.発酵乳,チーズ発酵,ドライソーセージ発酵,納豆発酵,ワイン発酵,アミノ酸発酵,醤油発酵,抗生物質発酵,塩漬漬物,乳酸菌発酵漬物等のあらゆる発酵産業においてしばしば汚染を引き起こし,工業的に多大な被害を与える.最近では食品の変敗菌を制御する目的でファージ製剤が開発されてきており,新たな感染症治療法として病原菌の制御(ファージセラピー)が注目を浴びている.
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