本書は近代憲法の思想史的かつ社会学的分析を試み、いわゆる「市民的・法治国的」憲法の性格を鋭く剔抉すると同時に、著者独自の憲法論を提示しようとするものである。その底には、与えられた規範の文理解釈にとどまる法実証主義と、国家的実存を無視する国際法優位説とに対する激しい批判が息づいている。
「憲法論の課題は、多くの伝来的な文言や概念がいかにそれ以前の事情に従属しており、今日ではもはや新しい酒を盛るための古い皮袋ではなく、時代おくれの、虚偽のレッテルにすぎないかを立証することである」と著者は序文で述べている。彼は、憲法を構成するさまぎまの概念を歴史の中でとらえなおす。まさにそのことによって近代憲法の基本構造と歴史的状況をまざまざとわれわれの前に示すのである。
議会制民主主義を否定し、人民の直接的な信任に支えられた代表者を求める著者の理論は、結局は、ナチ到来の道をはき清めるものとなった。だが、その鋭利な問題意識による分析は、初版刊行後半世紀の試練にたえ、今日なお寄与するところ大であろう。本書との対決を通して鍛えられた者こそが、自らの立場に強さを加えることとなるであろう。
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