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日本には人口3万人前後の「地方小都市」が少なくない。その多くは現在、人口減少・高齢化・地域産業の不振に悩まされている。山形県長井市、藩政時代は米沢藩の一角にあり、最上川上流の最後の舟着場として発展してきた。しかし明治以降、物流が陸上に移行し、東北内陸の条件不利地域を形成してきた。
そのような状況のもとで、戦前期には土地10万坪を無償提供して東芝系のコンデンサメーカー「マルコン電子」を誘致、戦後はTV市場の拡大の中で従業員2000人規模の事業となり、以後、長井はマルコン電子の企業城下町として発展した。ただしその後マルコン電子はコンデンサ大手の日本ケミコンに譲渡され、現在では従業員数約230人にまで縮小している。
農村地帯に近代工場が展開し、就業機会が拡がると、多くの農家は兼業となり、また作物としては機械化の体系ができている水稲に傾斜していく。長井でも農家の大半が出稼ぎから解放され、兼業・共働き・休日の水稲栽培により、経済的な豊かさを獲得していった。
他方、マルコン電子の縮小により、製造業の出荷額と従業者数は激減、地域産業に暗雲が拡がる。だが戦後の産業化の中で、域内に独立創業企業が多かったという特質もあり、新たに誘致されてきた都会の機械金属系中小企業と共にレベルの高い産業集積を形成することにもなった。地域産業振興の将来を考える上で、この機械金属工業集積に期待される点は少なくない。
農業に関しては、就業機会を失い高齢化した農業者の多くは離農し、むしろ専業農家による大規模受託生産、畜産などとの複合経営への動きが顕著にみられる。これは長井市が日本農業の構造転換の先端にいることを意味する。
こうして長井市は、東北内陸の条件不利都市でありながら、農業と工業が調和した持続可能で豊かな未来志向型の田園都市を目指し前進している。本書ではこれを日本の地方小都市の未来を映す「長井モデル」として、その先進的な取組みに学ぶ。(せき・みつひろ)
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