取り寄せ不可
≪あらすじ≫
濃霧に沈むボルドー、深夜の駅で完全な記憶喪失と偽の人格を作り出す精神障害―遁走性フーグ症―のある男が救助され、精神科医マティアスのもとへ連れられてきた。同時刻、駅の外れで牛の頭をかぶせられた全裸死体が発見され、若い女警部アナイスが現場へ急行する。マティアスとアナイスの抱えたものは、捻じれながら絡み合っていく。
マティアスは、患者の正体を探ろうとするうちに、自らもまた遁走性フーグを発症して記憶喪失と人格遷移を繰り返してきたことに気付かされる。そして、自分こそが殺人犯なのではないか、と疑いを抱く。孤独な四十代の精神科医が、その原因である多重人格性を受け入れ、遁走する自分を追いながら過去を切り開き、真犯人を探しだそうとする。
女警部アナイスは、次々に発見される死体を手掛かりに、事件の真相を追い求め、同時にマティアスを追い求める。マティアスは犯人ではないとの根拠のない確信と、制御不能な渇望に駆り立てられたアナイスは、深刻な神経症を再発し、動き続けるために迷いなく覚せい剤を打つ。アナイスは捜査の正道を踏み外し、やがて囚われの身となった。
霧のボルドーからマルセイユのホームレス世界へ、ニースのカーニバルからパリの現代アートシーンへと、予想できない鋭角さで展開してゆく物語を、孤独な二人マティアスとアナイスのもどかしい愛が走る。
歪んだ真実は嵐の真っ只中、神話の舞台で二人を待っていた。
≪著者プロフィール≫
1961年生まれ、パリ在住。独立系ジャーナリストで、国内外の多数のメディアと共同して活躍した。小説家にして脚本家、漫画原作家でもある。
≪訳者プロフィール≫
吉田恒雄
1970年以降、パリ在住。会社勤めを経て翻訳家に。訳書には『ゾルゲ 破滅のフーガ』(岩波書店)、『タルタロスの審問官』、『ニコラ警視の事件』シリーズ(ランダムハウス講談社)、『死のドレスを花婿に』(柏書房)、『ナチ強制収容所における拘禁制度』(白水社)などがある。
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