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数学で〈時〉を捉えられるだろうか? ニュートンは決定論的な宇宙の中に時を封じ込め、ポアンカレは世界の複雑性の中に時のダイナミズムを再発見し、ルネ・トムは「形」によって時を捉えようとしたが、時の本性はいつも数学者たちの手をすり抜ける──。
たゆみなく流れているはずの時が運動と軌跡の内部に組み込まれてしまう第一章。物理世界の随所に潜む無秩序と計算不可能性が発見されるとともに、根本的に新しい時のイメージが浮上する第二章。時をとらえるもう一つの数学として、発表当時センセーショナルに関心を呼んだカタストロフ理論を、その限界とともに鮮やかに振り返る第三章。そして最終章では、時の物理数学と文学が思いもよらない形で結びつく。この世界の変転は計算し尽くせない。だからこそ、時の本性を捉えることは数学者たちの見果てぬ夢であり続ける。
数学書の優れた書き手として知られるエクランドの著書のなかでも、時の形象という絶妙なテーマに沿って書かれた本作は、フランスでジャン・ロスタン賞を受賞し、日本語以外に9カ国語に翻訳されている珠玉作だ。
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