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『楞伽経』には四巻本、十巻本、七巻本の三種があるが、初期の禅宗ではこのうち四巻本楞伽経を所依の経典とし、達摩大師は慧可にこの四巻本を以てその心要であると伝え、日本の禅門でも最も読まれたのがこの四巻本である。本経の主題は「心意識を離れた自覚聖智を証得せよ」ということである。
西暦四三五年、インドの三蔵法師グナバドラがランカー島から『楞伽経』の梵語原本を中国南朝宋に齎し、その後四四三年に漢訳したものの写本が現在も大正新脩大蔵経第十六巻に収められている。その梵語原本が南北朝時代にすでにないことを知らなかった虎関師錬禅師は『仏語心論』の中で、直接梵文に接することができないことを嘆いている。
この漢訳を基にして、失われてしまっていた梵文テキストの復元を試みてきた著者を中心とする禅文化研究所楞伽経研究会では、復元梵文の確認とその日本語訳の作成、また漢文の訓読を進めてきた。そのうちの梵文復元と日本語訳を定稿した成果が本書である。
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