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"確率解析に関する教科書や専門書は内外にわたり多数刊行されている。それらの多くは,ファイナンスなどへの応用を考えると,内容が不十分であったり,多すぎて大部な本になっている。本書ではできるだけ簡潔に確率解析の結果をまとめ,証明も省かずに説明されている。
確率過程論は一般的にマルチンゲールの理論を基本として論じられる。この理論はDoob:Stochastic Processes, 1953, により創始された。Doobは確率過程を連続と仮定する問題に対して,独立確率変数の和の理論に関するKolmogorov のアイデアを整理して活用し,マルチンゲールの考え方を巧みに用いて展開した。
マルチンゲールの理論は伊藤清の確率積分,確率微分方程式のアイデアと結びつき,1970年代に飛躍的に発展した。特にフランス学派により不連続なマルチンゲールを含む壮大な一般理論が形成された。しかし応用上は連続なマルチンゲールが最も重要であり,日本では一般的に確率解析は連続なマルチンゲール理論を指す。
本書は必要な知識を2乗可積分という枠組みで説明し,関数解析の知識が必要ないよう配慮されると共に,予備知識としては線形代数及び測度論が必要だが,測度論に必要な知識は第1章で解説されている。東京大学数理科学科の長年の講義に基づく第一級の教科書である。"
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