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17世紀のヨーロッパにおいて,書簡は公開を前提としたものも多く,学問にとって重要な情報・意見交換のツールであった。デカルトも当時の多くの学者たちと往復書簡を交わしており,737通が残されている。そこでのやり取りを通してデカルトは自らの思想を練り,著作を残していった。彼にとって書簡は,思索の場であり,まさに「知性の実験室」であった。
第Ⅰ部「デカルトの生活と思想」では,膨大な全書簡の中から特に印象的な文言を年代順に取り上げ,デカルトの生涯と思索を辿る。
第Ⅱ部「精神と身体」では,デカルト哲学の中でも重大な課題である心身問題に焦点を絞り考察。西田哲学との比較や,デカルトが精神と身体との区別をどう考えたのかをエリザベトなどとの書簡から読解する。
第Ⅲ部「論争のさなかで」では,レギウス,アルノー,モアとデカルトの往復書簡での論争を検討する。デカルト自身の立場の特異性や同時代の論争相手がデカルト哲学を受容した実態が浮かび上がる。
本書は,書簡をも含めたテキスト読解による今後のデカルト研究の基礎資料となるだろう。
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