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定家本(青表紙本)系統の諸本中、52巻中48巻が鎌倉末写の基幹巻である最重要古写本の全貌を初公開!
【池田本『源氏物語』の特長】
(第1回配本所収「解題―書誌的概要(岡嶌偉久子)」より抜粋)
本書は、かつて池田亀鑑「桃園文庫」の所蔵であったことから「池田本」、あるいは「二条為明筆」との極札を持つことから「伝二条為明筆本」とも呼称されてきた。『源氏物語』五十四巻中の花散里・柏木巻を欠いて全五十二巻四十九冊。この内、後からの取り合わせである四巻四冊(賢木・東屋・蜻蛉・手習巻)を除く四十八巻が成立当初の基幹の巻々である。『源氏物語大成』以来、その筆致・紙質・装本の趣等から鎌倉末期の成立と認定されている。
『大成』校異欄には略号「池」として採録されている。基幹の四十八巻はすべて「青表紙本」としての採録で、その中で桐壺・初音・浮舟・夢浮橋の四巻については『大成』底本である大島本が欠巻、あるいは時代の下った後補等であるために、本書池田本が底本となっている。
このような池田本は、『源氏物語』鎌倉写本中、成立当初の基幹巻を最も多く保持する伝本であり、同時に、その四十八巻の本文がすべて「青表紙本」で揃っていることは、「青表紙本」鎌倉写本において現在のところ他に例がない。〔略〕この基幹巻四十八巻は書写者がほぼ二手(甲筆・乙筆とした)に集約される。中でも甲筆とした三十六巻は整った一定の筆致であり、この内の八巻には本文同筆の「奥入」が付載されている。
藤原定家が『源氏物語』本文を整えた時、その各巻末に書き入れた簡略な勘物である「奥入」、周知のように、その有無は『大成』においての「青表紙本」伝本価値判断の最も重要な事項の一つであった。先に述べた数々の特徴を持つ本書池田本が『大成』の底本とならなかったのは、池田本の奥入は巻によって偏った不備なもの、という池田氏の判断が大きく左右したとも言われている。〔略〕しかし、その後「奥入」についての調査・研究は進展し、本書池田本の「奥入」は最も初期の形態に属するものか、との再評価も行われている。
鎌倉写本としての池田本の姿を見る時、一枚添えられた後補の打曇紙表紙の次には、多くの巻々に成立当初の本文共紙表紙がそのまま残されている。鎌倉期の本文に対しては、室町期の勘物に類する行間書入の他には、ほぼ後補の手が入っていない。成立当初の本文・姿を比較的明瞭にたどれる写本であると言ってよい。
定家が整えた「青表紙本」の本文は、室町期以降現在に至るまでほぼ『源氏物語』鑑賞・研究の基底本文であったと言ってよい。しかし近年、この「青表紙本」の概念に対しての様々な疑義・見解が報告され論じられている。旧来の「青表紙本」の概念そのものが揺らいでいる現今の状況において、鎌倉期成立当初の基幹本文四十八巻をそのまま保持している池田本は、向後、重要な役割を果たす伝本となると思われる。
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