取り寄せ不可
たとえそれが、人でなかったとしても。
これでも私は、身のほどはわきまえているつもりである。
武器修理ロボットとして、この世に産まれた命。
本来であればその機能を駆使して人間に貢献することが、機械知性の本懐とも言えるだろう。
しかし、どうもおかしい。
人類のほとんどが消え去った地上。主人であるハルとの、二人きりの旅路。
自由奔放な彼女から指示されるのは武器修理のみに留まらず、料理に洗濯と雑務ばかり。
「やるじゃねえか、テスタ。今日からメイドロボに転職だな」
全く、笑えない冗談である。
しかしそれでも、ハルは大切な主人であることに違いはない。
残された時を彼女のために捧げることが、私の本望なのである。
AIMD――論理的自己矛盾から生じる、人工知能の機能障害
私の体を蝕む、病の名である。
それは時間と共に知性を侵食し、いつか再起動すらも叶わぬ完全停止状態に陥るという、人工知能特有の、死に至る病。
命は決して、永遠ではないから。
だから、ハル。
せめて、最後のその時まで、あなたとともに――。
第11回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞した『平浦ファミリズム』の遍柳一がおくる、少しだけ未来の地球の、機械と、人と、命の物語。
【編集担当からのおすすめ情報】
第11回小学館ライトノベル大賞にて3年ぶりの大賞受賞作となり、
新人離れしたテーマ性と感動的な物語が話題を呼んだ『平浦ファミリズム』。
その著者、遍柳一氏が満を持して世に送り出す新作です!
人類のほとんどが消え失せて荒廃した地球を旅する
死期の迫る軍事用ロボットのテスタと、人間に見捨てられた少女ハル。
機械と人との関係性を越えて絆を深めていく彼らの姿に、心が震えます。
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