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時代の香りを伝える細部を活写
本書の特徴として、第一に、ヨーロッパ中心史観に陥ることなく、世界規模での歴史の展開に目配りしており、ヨーロッパ史を「グローバル・ヒストリー」のなかで論じることに成功している。第二に、政治史中心の時系列的な叙述と、社会史、経済史、文化史の構造的な叙述がバランスよく並立されており、抑揚に富む近代史の経緯を多面的に理解できる。第三に、無名の人物を多数取り上げることで、19世紀の実像を多様な次元で提示しようとしている。女性や労働者層に関する叙述も充実し、20世紀に巨大なうねりとなるかれらの思想や運動が、19世紀にいかに生み出され、成長していったのかが明解に語られる。「下からの社会史」の歴史家エヴァンズの本領発揮であり、民衆やマイノリティに光を当てた分析は精彩に富む。
わが国では、19世紀ヨーロッパ史の本格的な紹介はしばらく途絶えていた。欧米では、近代の歴史的意味を問い直す研究は確実に厚みを増しており、その最先端を日本の読者に伝えたい。第2回・第3回配本。カラー口絵・地図多数収録。
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