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由緒・伝承・旧跡はどのように創られたのか?
「史実から伝承」という観点をキーワードとして、多くの事例を三河地域から抽出しつつ、親鸞伝承・蓮如伝承あるいは教如伝承などを生み出す素地を探る。道場の形成から近世寺院の成立における身分の獲得という様相を、絵画史料の分析を含めて考察する。
【本書の構成】
●第Ⅰ編 三河における地域道場から教団への展開
三河地域において本願寺傘下に入った地域「本願寺教団」の様相を考察する。特に上宮寺門徒団の形成、本宗寺の創立、そして上宮寺も含めた地域大坊主の門末形成のあり方に注目する。
●第Ⅱ編 本願寺門主制と近世の末寺身分
道場の寺院化にともなう身分昇進の動向について考察する。本願寺自身も含め、身分を象徴すると考えられる装束衣体や、それを着用する真影・似影に焦点を当て、考察の対象とする。
●第Ⅲ編 本願寺下付物と墨書名号
墨書名号のみならず、蓮如以降一般化する道場や寺院礼拝物全般の本願寺下付物について考察する。たとえば蓮如下付の親鸞像の礼盤の狭間にすでに身分差の萌芽が見られる。また墨書名号の筆者を、主に蓮如・実如のものを中心に検討する。
●総論
道場の形成から近世寺院の成立過程における身分の獲得という様相を、絵画史料の分析も含めて考察する。その要件の一つが由緒書であり、それに付随する名号などの伝承に色づけられた宝物の存在である。それは、寺や住職の格付・身分と不可分の関係にある。歴史的事実ではない由緒・伝承が醸成していくあり方を、歴史的事実のなかで捉え直し、由緒に仮託された宝物や旧跡がどのように成立してきたかを論ずる。
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