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われわれは科学に期待し「科学に依存した社会」を創り上げてきたが,ますます深刻化する社会問題に苦しんでいる。単なる「科学至上主義」ではこの危機を乗り越えることはできない。「トランス・サイエンスの時代」が到来したのである。しかし「科学に依存した社会」を超えて先に進むためには,どうやったらよいのだろうか。本書では,それへの教訓を求めて歴史民俗の世界へ目を向ける。われわれの先人たちは,科学的知識も医学的知識も不十分な時代において,それでも「科学以外の人間の知性」を発揮して生き抜いてきた。その生きるための知性は,意味を創りそれを伝承し活用する行為,つまりセンスメーキングの行為によって実践されてきた。本書では,ブルーナーやワイクの議論を出発点としつつ,歴史民俗の実際の諸事例を検討し,センスメーキングの行為が具体的にどのようにして「科学以外の人間の知性」の発揮を可能にしたのかを明らかにする。「トランス・サイエンスの時代」への備えを提示する「経世済民の学」をめざすともに,経済学は「合理的個人という人間像を出発点として公理論的な科学として展開されねばならない」という「科学至上主義」の学問観に対しても挑戦する画期作となっている。
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