精神分析学の歴史は、ウィーン、ブダペスト、ロンドン、ベルリンなど各都市のそれぞれが果たした役割抜きには語れない。ブダペストに生まれ育った本書の著者バリントは、その地に依拠しつつ、若き日に理論色の濃いベルリンの雰囲気に触れ、ナチスドイツを逃れてロンドンに亡命して、後半生を送った。恩師フェレンツィの考えと実践を継承・発展しながら、各都市の学派の「セクト主義」を排して活動してきた著者は、その対象関係論をはじめとして、フロイト以後の世代の最も重要な精神分析医になった。
本書はその生涯の活動を刻印した主著であり「自我の初期発達段階、一次対象愛」「エロスとアフロディテ」「愛と憎しみについて」など欲動と対象関係をあつかった第1部と、「性格分析と新規蒔き直し」「精神分析治療の最終目標」「転移と逆転移」など技法の問題を論じた第2部、それに第3部・訓練の問題の全20章から成る。親と子、男と女、さらに同性の間で交感される愛と性と「やさしさ」について透徹した分析を加えたこの書を、専門家以外の読者にも提供したい。
「本書が中井久夫氏らの訳で世に出るのは、著者にも読者にも、また著者と浅からぬ縁のあった私にも、大変な幸運である」(土居健郎)
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。