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フロイトの『夢判断』刊行とともに幕を開けた20世紀は、精神分析の世紀だったとも言われる。しかし、その萌芽期や発展期に考えられ実践されてきた重大な成果を、われわれは遺産として、十分に受け継いでいるであろうか。ここにはじめて公刊するフェレンツィの『臨床日記』は、精神分析の可能性をぎりぎりまで押し進めた人の思索の軌跡であり、精神分析史上もっとも重要なドキュメントである。
ハンガリー出身でフロイトの一番弟子だったシャーンドル・フェレンツィは、死の前年の1932年、分析医である自分自身と患者のために、日記を書き付けた。精神分析運動がもっとも活発だった時期をほぼフロイトと同行していたフェレンツィの思想のすべてが、ときに荒っぽい形であれ、ここには表現されている。フェレンツィにとって、人間とは人間関係のことであり、人間関係とは広い意味で性関係のことであった。この日記に頻出する医師と患者のあいだの相互分析をめぐる議論は、まさに迫真である。また、心的外傷(トラウマ)問題の重要性をくりかえし説き、立ち入って考察している。
人間の心のあり方やその障害像を、そのニュアンスの陰影までかくも繊細かつ大胆に言葉に刻みつけた本は、稀であろう。ここには、師を批判しつつも、フロイトが提起したり萌芽状態のままにしておいた問題を徹底して押し進めていった弟子の姿がある。「人間の生の謎を解く鍵をみつけた」かのように思っていたでもあろう当時の高揚した雰囲気を、ときに苦悩を介してであれ、生き生きと伝えてもいる驚異の書である。本書によってようやく、フェレンツィという存在に、光があたる。
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