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世界初の体外受精児がイギリスで誕生したのは1978年のことである。情報や医療技術のグローバル化が進むなか、この出来事は日本などと同様に、中東地域の人々にとっても新しい時代の幕開けを意味した。エジプトでは、1986年に国内初の体外受精専門クリニックが開設され、翌年には最初の体外受精児の誕生が話題になった。その後、顕微授精の技術が実用化したのは 1990年代前半のことである。それから 20年余り、生殖補助技術を用いた不妊治療は、中東においても標準化された医療の一部として普及してきた。2012年にエジプトで公開された映画『パパ』(B?b?)は、そうした不妊治療の時代に生きる人々を描いたフィクション・コメディーである。主人公は不妊専門医のハーゼム。ある日、彼のもとに、数カ月前に結婚したばかりの友人が訪ねてきてこう言った。「今すぐ顕微授精をたのむ」。驚いたハーゼムが理由を尋ねると、友人は答えた。「結婚式の翌日から、親戚が『赤ん坊はまだか』と聞いてくるんだよ。こんなのは早く済ませてしまいたい」。「いきなり顕微授精だなんてせっかちなやつだ」と笑っていたハーゼムだったが、やがて彼自身も思いがけない状況に追い込まれる。毎日が忙しく、疲れ切って帰宅し、ソファーで眠ってしまうハーゼムに、新婚の妻が「私も顕微授精をしてほしい」と願い出てきたのだ。医師として何人もの体外受精児を世に送り出してきたハーゼムであったが、妻の言葉に衝撃を受け、「子どもは自然な形で生んだ方がいいに決まっている」と叫ぶ。
不妊が治療可能となった時代、子をもつ手段の選択肢が増えるなかで、家族をめぐる状況はどのように変化したのだろうか。本書では中東を舞台に、この問いを考えていく。
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