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本書脱稿後の2017年12月20日、一人の男が逝った。佐藤文男、享年92歳。日本で最も多くの労働組合を結成し、労働組合員を増やした「オルグ」である。イオンやイトーヨーカドーなど、日本のチェーンストアのほとんどに現在労組があるのも、佐藤の仕掛けによるものだった。
佐藤に初めて会ったのは2008年11月、この時、一生懸命働く人びとに幸せをもたらす職業が存在していることを知り、亡くなる年まで交流した。1950~2000年代まで逆風に負けず、独自の手法で労組をつくり続けたヒストリー。仲間、ライバル、弟子たち、つくった労組から育ったオルグたちが別の労組をつくりまくったストーリーにロマンを感じてしまう。
一般の人がオルグの仕事を知ることはめったになく、多くのひとが労働組合員であることの意味を考えることもない。だが、給料を得て生活する人にとっては、いかに労働条件や労働環境を向上させ、暮らしを守るかは死活問題となる。職場で直面する諸問題を解決する最も有効な手段は、労働組合しかあり得ない。
企業は、環境には優しいのに労働者には厳しい。労組に対する意識も決して高いとは言えない。たとえば、悪質クレーマー。ちょっとしたミスで土下座の強要、ストーカー型の説教など、消費者保護主義の下での憂さ晴らしと攻撃。労働者の尊厳を、労働者自らが貶めるまでに社会意識が低下している。「さあ、労組の出番だぞ」と叫ぶ佐藤の声が聞こえてきそうだ。
このように労組の衰退が著しいわけだが、労働組合員は約1000万人もいるのだ。その全員が労組の役員候補だ。労組の活動を一生の職業にする人も、そうでない人も、オルグたちの足跡に目を凝らそう。労働環境だけでなく、生活を救う手段を認識する原点が本書にある。(ほんだ・かずなり)
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