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「ヒトラーの子どもたち」の教化あるいは排除
純粋な民族に属する身体的に完璧な人々によって支配され、人種的に受け入れ難く、経済的に役に立たない者は排除される――ヒトラーが実現を図った「理想郷」だ。「子どもは国民の最も貴重な宝」と『わが闘争』で宣言し、「ヒトラーの子どもたち」に教化する一方で、本書では、無数の子どもたちとその家族が迫害され、排除された惨状も明らかにする。人種至上主義に基づくナチ・ドイツの社会政策・占領政策、配下の欧州(ポーランド、フランスからロシア、ギリシアまで)の窮状を、回想録や日記など一次資料を駆使して包括的に論じた、「新たな第二次世界大戦史」といえる。
青少年組織の活動のため降伏直後のポーランドに来た、ドイツ乙女団の少女の回想が生々しい。相手の「敵意」を感じ、人種イデオロギーに縛られながらも、飢えている子どもたちに同情を禁じ得ない真情が、胸に響く。著者はこうした声に耳を傾けながら、戦争の脅威と人種至上主義が、子どもたちとその家族に課した過酷な処遇を詳らかにする。著者は『ヨーロッパの略奪』(白水社)で「全米批評家協会賞」を受賞した歴史家。地図・図版多数収録。
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