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理想求めて集えり我等――受験特化型の進学校にも、富裕層向け私立校にも負けない公立高校の使命とは。浦高OBの佐藤優氏が徹底解説
私、佐藤優は1975年に埼玉県立浦和高等学校に入学、78年3月に卒業した。在学中、卒業当時は意識することはなかったが、作家として活動し、複数の大学で教鞭をとるうちに浦高のような地方の伝統校には教育上の深い知恵が詰まっているのではないかと思うようになった。2015年に母校で講演を行ったのを契機に約2年間をかけてまとめあげたものが本書である。
本書は、「高校時代の生き方」「大学受験」全般に関する極意について論じたものだ。書籍化にあたっては浦高の生徒や保護者だけではなく、全国の高校生・浪人生やその保護者、とくにお母さん方の参考になるような加除修正を心がけた。世界で通用するために身につけるべき分野は何か、なぜ文系は数学を、理系は世界史を勉強しなければいけないのかといった学習全般に関する話から、浪人は何浪までしてよいか、海外留学にはどの程度の資金が必要か、心に不調をきたした場合はどうすべきかなどといった、受験産業が教えてくれないような話まで率直に記している。
特に強調しておきたかったことは2点ある。一点目は「総合知」の重要性だ。東大合格者の出身校ランキングなどを見ると急に名前が登場したような高校がある。だが、こうした学校の多くは生徒の進学先を適性とは関係なしに振り分け、受験科目以外の勉強は捨てさせるようなシステムを採っている。時間をかけてでも、すべての科目を学ばせる、総合的な教養の礎=総合知を高校時代に築いておくことは重要だと考える。もう一点は、浦和高のような地方の伝統県立高校は、「経済格差=教育格差」というテーゼに対するアンチテーゼになりえるのではないかという視点である。有名私立進学校に富裕層の子女しか通えないようになっている現状に対して、浦和高校のような、一定の学力があれば経済環境とは関係なく入学・学べる公立高校の重要性は「機会の平等」という側面からもっと論じられるべきだ。
2020年度からはセンター試験に替わって新テストが始まる。この流れは「受験生の学力を測る」という意味では概ね正しく、施行後、10年ほどで高スペックの大卒者の数が増えるだろう。だが、それは、いまの高校生、大学生、20~30代の社会人にとって強力なライバルが出現するということでもある。これからの激動の受験時代をどう乗り越え、生きていくべきかを真剣に考えるすべての人に本書を読んでほしい。
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