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中国近代文学の父といわれる魯迅は、日本でいえば夏目漱石にあたる。彼は中国では毛沢東によって、革命文学者として神棚に祀り上げられる存在となった。日本ではマルクス主義の文学的旗手として魯迅を評価するむきもあったが、本来の彼はそんな物差しではかれるような文学的存在ではなかった。阿Q的な精神構造から目をそらすことはなかった魯迅は、古典文学の研究者として『中国小説史略』を著し、さらには一九二〇年代の政治的思想的状況を風刺し批判していた。晩年には、上海において社会的関心の強い近代的な版画作家たちの育成につとめた。本書は、複雑で多面的な文学者魯迅の実像をできるだけ伝えようとしたものである。
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