取り寄せ不可
異国の君主は傲慢に口づけた。
“妹の婚約者の愛人”の私に。
「僕の妹の婚約者には、二度と会わないと約束したまえ」
王族らしい高慢さをたたえ、カシムは嘲るような口調で言った。
君のような女に妹の晴れ着を作らせるわけにはいかない、と。
カシムの妹のドレスを縫うことになっているアンジェリクは、
内気ながらその美貌ゆえにありもしない男性遍歴を噂されていた。
私は彼の愛人じゃない――必死の抗弁は聞き入れられず、
アンジェリクは気づくと力強い腕に抱きすくめられていた。
「もう話すことは何もない。君の特技を見せてもらおうか」
熱を帯びた褐色の瞳に絡めとられ、彼女は我知らず唇を開いた。
目もくらむほどの喜びに、互いの立場を忘れるふたり。秘めやかに熱い夜を重ねる一方、カシムの花嫁選びは着々と進んでいて……。思いがけず禁断の恋に落ちた無垢な乙女の、儚く切ない愛の軌跡。
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