京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝

京都粟田焼窯元錦光山宗兵衛伝

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出版社
開拓社
著者名
錦光山和雄
価格
3,080円(本体2,800円+税)
発行年月
2018年2月
判型
A5
ISBN
9784758970204

本書は、京都粟田焼の窯元であり、京焼の近代化に尽力して近代日本を支えた名匠・錦光山宗兵衛家と京都粟田焼の盛衰を、江戸・幕末の動乱期から明治を経て昭和初期にいたる歴史の中で描いたものである。京都粟田焼と言っても今や知る人は少なく、「幻の京薩摩」とも言われる。粟田焼は京焼の最古に属し、錦光山家は代々徳川将軍家御用御茶碗師を勤めていた。しかし、明治維新直後の東京遷都で多くの需要家を失い、窮地に追い込まれていく。将軍家御用御茶碗師の地位も失った六代錦光山宗兵衛は、海外に活路を見出す。また、苦心の末に「京薩摩」という絵付技法も開発。日本のアートとクラフトがヨーロッパに衝撃を与えた折からの「ジャポニスム旋風」の広がりもあり「京薩摩」は一世を風靡。最盛期には年間40万個を輸出するまでになり、東京遷都で衰微していた京都を救うことになる。その後、明治中期の不況でも「粟田の陶業は廃絶の危機」に瀕するが、ここでも六代の息子、若き七代錦光山宗兵衛が苦難を乗り切るべく京焼の改革に取り組んでいく。それは当時の西欧世界とのデザイン・化学技術における開発競争でもあった。とりわけ、1900年のパリ万博で最高潮に達したアール・ヌーヴォーの衝撃は大きく、危機感を持った七代宗兵衛は洋画家の浅井忠らと「遊陶園」を結成し意匠改革を進める一方で、京都市陶磁器試験場を設立。釉薬の開発、窯の改良などに奔走し設備の近代化を推し進める。「京薩摩」の生みの親であり最大の窯元であった錦光山宗兵衛だけでなく、藤江永孝、松風嘉定、宮永東山、諏訪蘇山、清風与平、清水六兵衛ら、京都の窯業の近代化に取り組んだ闘士たちの姿も織り込まれ描かれる。こうした改革により「京薩摩」は「世界一の細密描写の絵付陶器」と呼ばれ、海外の王室や貴族にまで求められ、現代ではそのあまりに高度な絵付技法のため再現不可能といわれる超絶技巧の工芸品と呼ばれるまでになっている。本書は錦光山家と粟田焼の変遷を各時代の「経済と文化」とに絡めて描かれており、京焼の歴史だけでなく、明治という時代の精神性がどのようなものであったかということも伝えてくれる。錦光山家や粟田焼、京薩摩などの秘められたエピソードが、初出の文献資料や本邦初公開の貴重な写真などを使い数多く紹介されている。加えて、海外で所蔵されている錦光山宗兵衛の作品の最高峰 (masterpiece)と言われている天才絵師・素山の描いた作品も口絵に掲載されており、歴史や美術を愛好する者にとっては待望の書と言える。

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