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「共同の暮しの中でよく出遭うものがみなむなしく、くだらないということを経験から教わったのち、失われるのではないかと心配していたもの、招くことを恐れていたものがどれも、それによって気持が揺すぶられたからということがなければ、それそのものには善いところも悪いところもそなわらないことを見たとき、わたしはやっとたずねようと心を定めた。真の善でみずからを分ちあずからせるような或るものが与えられるかどうか。ほかのいっさいを投げ棄てて、独りそれだけから気持が触発されるようなもの、それを見出して獲得すると、持続する最高の喜びが永遠にわたって享受されるような或るものが与えられるかどうかをたずねよう、と。」(「知性改善論」)
本書に収められた二つの著作は、ユダヤ社会から追放されたスピノザの初期思想をよく伝えるものである。ここには、既存の教義や語彙をもちいながら、同時にそこから自由になれるよう有効な手段を作りあげるべく自らの問題意識と言語を鍛えて、「持続する最高の喜び」を探り、「精神が全自然を相手にもつ、一つに結ばれていることの認識」を究めるスピノザが確かにいる。
後年の主著『エチカ』へと至る哲学の根本動機と独自の方法論が記述される二篇を、ラテン語刊本およびオランダ語写本から半世紀ぶりに新訳。最新の研究を踏まえた精細な訳注と解題を付した待望の一巻。
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