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福島の風景の多くは、長い時間をかけて人の手が作りだしてきた里山である。あれほど美しかった福島の自然。四季に移ろう風景から人が退避せざるをえない事態が生じた。
やがて除染作業が進み、黒いフレコンバッグが山と積まれ始めた。
風景が徐々に変わっていく。とてつもない何かが、この地に生じている。
高度な文明がもたらした福島第一原子力発電所事故。自然と人間の共生が崩壊していく現場の記録には、予兆として、人類の未来が写っているのかもしれない。
* 撮影行:120回
* 撮影区域:いわき市・伊達市・相馬市・南相馬市・田村市・川俣町・楢葉町・富岡町・浪江町・双葉町・飯舘村・葛尾村・川内村
* 撮影した5万点から190点を精選
* ドローン使用
* 写真説明・地図・エッセイ付
* 『はだしのゲン』翻訳者アラン・グリースン氏による英訳を付す
「土田ヒロミが福島でなくフクシマとしたのは、これまで40年にわたって広島ではなくヒロシマを撮ってきたからだ。人類史上のこれからもどこにでも起こりうる出来事として語りつぎたいという思いが込められている。……福島に、複雑怪奇だといいたくなる変化がじわじわ進行している」
(木下直之・東京大学大学院教授・芸術資源論 本書収載「この地に生じたとてつもない何か」より)
「机の上で、20キロ、30キロと、避難指示の円を地図に描いて拡大してみた。線上に家、学校、商店、田畑、谷川、森林、神社……などが理不尽な風景としてたち現れてきて、そこで起きている異常を思った。当事者の理不尽を共有できるような表現を目指さなくてはならないのだ……美しい山里の風景を撮っていたはずが、突然、汚染物の山が立ちはだかるという事態を記録しなければならなくなった。……未来に向かってレンズを向けているような感覚に襲われもした。眼前の風景が十年後、二十年後、どのようになっているのだろうか?」
(土田ヒロミ「フクシマの風景を撮る」)
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