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詩の生成、詩人の誕生――
小説家志望の青年が詩を書きはじめるまでを綴った「あるゴダール伝」。
元タクシードライバーの詩人で、かつてはテロリスト志望だったと思しき男が、
PCモニター上に現れた宇宙公務員の質問に答えていく「詩人調査」。
詩とは何か、詩人とは何か、そして詩人にとって詩とは何かを描く2篇。
(栞=寄稿:金井美恵子、著者解題)
では、『海を見に行け』は不発弾だったのか。
それはまだわからない。
ひょっとしたら、それを偶然手にした一人一人の読者の内部で、すでに小爆発を起していたかも知れない。
そして彼自身や彼の友人や恋人を海に連れていったかも。
しかし、その程度の爆発で権田さんが満足するはずもない。
20年後の今でも、『海を見に行け』は東京の古本屋の暗がりで大爆発の時を待っているはずだ。
――「あるゴダール伝」
わたしはね、東京では結局、一度も海を見ていないんです。
不思議ですよね。
海は近くにあるはずなのに、うんと遠い気がしていました。
ですから『海を見に行け』という詩集には、
便所に流したニョロニョロが下水を渡って海に出るというイメージが色濃くあったかも知れない。
あるいは神田川に棄てた『チェーホフ爆弾』がどんぶらこと流れて
海まで運ばれていくイメージとか。
――「詩人調査」
※「詩人調査」は文芸評論家・斎藤美奈子さんが朝日新聞で、2010年小説ベスト3の一作として選んだ作品です。
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