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2017年11月、武蔵野美術大学 12号館地下展示室で開催される「遠藤彰子展 “Cosmic Soul”」公式図録。「人間の存在」や「今、生きている実感」をテーマに、500号以上の大作に挑みつづける遠藤彰子。初期の「楽園シリーズ」から飛躍のきっかけとなった「街シリーズ」をはじめ、展覧会出品作品のみならず、代表作を含めた約100点の絵画・彫刻等で構成。高階秀爾による解題とともに、50年以上にわたる画業をまとめたThe Akiko Endo決定版!
21歳、東京から神奈川県相模原市に移り住んだ遠藤は、雑木林に囲まれた自宅周辺をこよなく愛するようになる。野兎やキジバトが棲む鬱蒼とした森をデッサンしては、夜になると油絵に描き直す。自然の中で、人間と動物がカーニバルを繰り広げる「楽園」のイメージは、こうして生まれた。
しかし「いつも何かが欠けている」という感覚はぬぐえず、やがて画面の登場人物一人一人に感情移入し、小さな一部屋一部屋を日記風に描きつづけ、そこでの模索が「街」シリーズへとつながってゆく。
街シリーズを手がけていた1980年代、日本は好景気に沸くいっぽう、物質的に豊かになればなるほど不安定な気持ちが増幅していくのは何故か。こうした世情の中で、遠藤は画面にいくつもの消失点を設定し、相反する空間を手にする。不安と、楽しさが、同居する街が、ここに出現する。空間はねじれ、ゆがみ、階段はメビウスの輪のように……日常と幻想がからみ合った、謎めいた迷宮。この空間が500号、さらにはそれ以上の大画面へと遠藤を駆り立てる。
見上げる空と、落ちゆく空。反転する重力。さっき生まれた浮遊感が、つぎの瞬間には失墜する。肉体が意識を揺さぶる瞬間だ。高階秀爾が遠藤彰子を「『バロック性』に溢れる芸術家」と評する所以である。人が生きて、ここにあるということ。肉体から、宇宙の魂へと昇華する瞬間。
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