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スミスの『国富論』から20世紀末までの200年に及ぶイギリスにおける穀物(小麦)の生産と消費に関する変遷を通して,経済学と経済政策の歴史的展開を考察,さらに穀物を巡る国際関係の推移を解明した画期的業績。
スミスやリカードウ,マルサス,ミルなど多くの理論家は農業を前提に地代,利潤,価値の問題を論じてきたが,農業の位置づけが変わるとともにジェボンズやマーシャルなどにより新たな経済学的展開がなされた。
産業革命による工業化と資本主義的生産を展開したイギリスは,1770-1870年を「小麦パンの時代」と呼び,1世紀の間にパンの消費は4倍以上,人口は850万から2600万人へと3倍に増えた。自由貿易や植民地への資本と労働の投下で,20世紀初頭には食料の外国依存と農業人口の減少が極限にまで進む。第二次世界大戦後に経済力が低下するなか農業の強化を図り,EC加盟を通じて穀物など主要食糧の自給化を実現した。しかし生活の向上による食生活の変化と自給化に伴うコスト増を背景に,環境問題や栽培品種の限定,アグリビジネスによる流通支配など新たな課題に直面し,国民の生活基盤を支える食料政策は構造的な転換に見舞われた。これらの分析を通して,現代世界の食糧問題や食料安全保障など,読者は食に関わる多様な問題群から多くの示唆を与えられよう。
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