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●昨年、日経新聞に連載された日本を代表する作編曲家、服部克久氏の「私の履歴書」に大幅加筆のうえ、今や高視聴率を稼ぐテレビドラマには欠くことのできない息子・服部隆之氏と、戦後歌謡の礎を築いた父・服部良一から何を受け継いだかを掘り下げる対談も収録。日本の大衆音楽を牽引してきた名家のDNAまで垣間見られるユニークな自伝風エッセイが本書である。
●具体的には二部構成で、第一部は克久氏の自伝風エッセイ。最大の読みどころは新聞連載中には紙幅の都合で盛り込めなかった編曲家および音楽監督の仕事の現場を、具体的なアーティストとのエピソードを交えて振り返っているところ。登場するのは、山下達郎、さだまさし、八代亜紀、小林旭、アルフィー、郷ひろみ、森山良子、勝新太郎、金子由香利、スパイダース、冨田勲、寺山修司……。
●第二部は息子・隆之氏との服部家のDNAを掘り下げるロング対談。戦後歌謡ながらいまだ多くのJPOPアーティストにカバーされ古びることのない良一の歌は、演歌の源流とも言われる「古賀メロディー」に対して洋楽志向の「服部サウンド」と呼ばれた。明治40年生まれで草創期の大阪フィルでは後のマエストロ・朝比奈隆と師を同じくし、その後ジャズに転身、エノケンのミュージカル、李香蘭の映画への楽曲提供、ブルース、ブギー……良一はかつて「僕にとっては若くして死んだガーシュインが一つの目標であり」(「私の履歴書」)と記していたが、克久氏も日本の芸能界の中心にいながら、フランスのミシェル・ルグラン、ポール・モーリア、イタリアのニーノ・ロータら同世代の世界の音楽家たちと「インターナショナル・ポップス」でしのぎを削り、それが数多くの仕事に活かされてきたことを思うとき、隆之氏も含めて一度も演歌に向かわない日本の大衆音楽では唯一無二の服部家のDNAの特異性が浮かび上がってくる。
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