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本書の特色と内容
●著者・小田幾五郎と『通訳酬酢』
小田幾五郎(1755~1831)は対馬藩の特権的名門商人「古六十人」の一族で、朝鮮語大通詞にまで昇進。通詞として秀でただけでなく、誠実で政治的な交渉能力にも長け、倭館館守を4期勤めた戸田頼母に重用されるが、藩内部の争いにまきこまれ禁足の刑を受ける。晩年、後輩通詞のためにまとめた書『通訳酬 』が本書である。
「酬酢」とは「応対する」の意味で「酉へんに作」の本字は「酢」。
●様々な分野に及ぶ日朝問答集
本書は、朝鮮外交を担った朝鮮側の訳官と対馬の通詞の問答集。内容は、外交、歴史、地理、政治、経済、制度、産業、交通、情報、宗教、思想、教育、文学、美術、音楽、食物、自然、怪奇現象等々、さらに為政者から庶民階級にいたる人々の行動や考え方、礼儀作法に迄及ぶ。日朝外交の第一線にいる通訳官同士の本音が伝わる一級史料。
●対馬藩の「朝鮮語通詞」とは
対馬藩でも実際に交渉役を担った「通詞」は、武士ではなく、必要に応じ藩が雇いあげた商人であった。特権的商人のうちから厳しい訓練をへて「朝鮮語通詞」が選ばれ、藩営の通詞養成所で英才教育が行われた。
●朝鮮の「倭学訳官」とは
国家試験(雑科)に合格し日本文化にも精通する教養人の訳官だが、身分的には両班と常民(平民)の中間階層。彼らの悩みも問答の中に描かれている。
●底本・韓国国史編纂委員会所蔵本
本書は小田幾五郎著『通訳酬酢』(3冊12巻)の全文を翻刻。底本は自筆原本である韓国国史編纂委員会所蔵本(対馬宗家文書記録類4313~4315)を用いた。このうち欠本である「巻八 官品の部」は旧本『通訳実論』(長崎県対馬市鍵屋歴史館所蔵)で補った。
●「解読編」「原文編」に分けて収録
「解読編」は、原文に句読点を付して読み下し、難解な語句には註を付して解説。漢字は常用漢字に改めた。原文に従い、「通曰く」「訳答る」等会話の主を文頭に出し、説明部分は改行して会話部分と区別した。「原文編」は、底本を原文どおりに翻刻した。
●編者による詳細な解説と索引を附す
巻末に編者による詳細な解説を収録。また、史料活用の便をはかるため、索引を附した。
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