精神医療 88号

特集:貧困と精神医療

精神医療

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出版社
批評社
著者名
『精神医療』編集委員会(1992) , 大塚淳子 , 犬飼直子
価格
1,870円(本体1,700円+税)
発行年月
2017年10月
判型
B5
ISBN
9784826506687

21世紀の今、飢餓に苦しむ人々がいる国や地域がある一方で、相対的貧困が深刻さを増す国や地域がある。2012年の相対的貧困率は16.1%、子どもでは16.4%である。餓死や、生活のためと刑務所の入所を希望した人が起こす事件は、社会制度の不備やコミュニティの機能不全など現代社会のあり方が引き起こす貧困の結果と言える。憲法が謳う健康で文化的な最低限度の生活保障の制度は綻びが随所に隠せない。本特集では、精神医療の切り口からみる貧困、精神医療の現場で出会う人々が抱える貧困問題に絞って考えてみたい。
精神疾患を罹患し、貧困の連鎖に絡めとられる人々は、大変に苦しい生活から抜け出すことが困難な現状にある。生活保護費における医療扶助の半分を精神科入院費が占めるのは周知である。精神科病院在院患者の実態(長期化、家族との疎遠や絶縁、収入源の無さ)は貧困の問題と捉えられる。近年増えている受診者には、現代社会における構造的格差により貧困と隣り合わせ、もしくは陥っていく中で精神疾患を病む状況が窺える。彼らの多くが「サイレント・プア」と呼ばれる孤立した状況に置かれ、深刻な事態に陥りかねないことは看過できない。
公助が次第に厳しくなる中、国は「地域共生社会」の実現に向けて、《公的支援の『縦割り』から『丸ごと』への転換》《『我が事』・『丸ごと』の地域づくりを育む仕組みへの転換》を新たな政策理念として掲げて動き出している。生活困窮者自立支援法改正に向けた検討や生活保護基準の検討なども、当該の理念下で着手されている。今回の特集を通して、我々が精神医療の現場で出会い向き合う「貧困」の現状を改めて知り、排除の進行や格差の拡大阻止に向けて、どのような視点を養い、何を成すべきか、読者と共に考える機会としたい。

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