取り寄せ不可
◆第一詩集
こんなふうに、ひとりの詩人が、そして一冊の詩集が、ひとつの大事なことのために存在するという例は、最近では稀である。秀逸なアイディアで良質のユーモアをたたえて書かれている「餃子物語」や「一月」のような作品にも、この核心の変奏となっている側面があると私は考える。(栞より・福間健二)
夢の詩に挟まれたこの複雑な、説明が到底追いつけない既にしっかり立ち上がった作品世界に、これ以上わたしが無駄な言葉を付け加えるのも憚られるから、まずはその真価が恐ろしく発揮され始める2章の終わりまで、できれば止まらず、しかしじっくりと読んでもらいたい。(栞より・暁方ミセイ)
◆収録作品より
もう外も、すっかり暗くなったのだと、部屋のなかにいるのだと思っていた。見えないけれど耳で決めてこれは雨だと思う。乗りこんだ覚えのない船のなかにいつしか自分はいて、足下がおおきく揺れだすとは、そんな夜があるとはだれも教えてくれなかった。
いいえ、船ですらなかった。夜にもなっていなかった。雨も降っていなかった。まだあかるい時間に、部屋もからだも激しく揺さぶられていた。窓の外の景色がどんどん変わっていった。自分は夢のなかにいて、見慣れた風景に水がなだれこんできた。そう思っていたかったが、水はこんなにも現実だ。誰の顔も思い浮かべなかったが、空には星が瞬いていた。
「あかるい時間に」より
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