取り寄せ不可
ヨーロッパ精神史に聳える二人の思想家が目ざしたものは何であったか。碩学による中世思想への最良の道案内。
「アウグスティヌスは魅力的な個性の持ち主であったにちがいない。……かれのカルタゴ的灼熱と情熱は、寛大さと人間的理解により浄化されていた。かれは人間の心の深淵を測ったのであったが、しかし卓越性も洞察したのであった。かれを象徴するものは燃えるような心であり、高みへむけられたまなざしである。」
「聖トマスは静かで瞑想的な性格であったにちがいない。かれの人生は直線的で明白な軌道をたどり、かれの労力はひたすら学問にのみあてられた。すべて高貴なもの、善きもの、真なるものに開かれていたかれの魂は、自己自身の経験にもとづく人間的深淵の深みを知ることはなかった。……人間の精神には見通すことのできない神秘が与えられているということを知っているのではあるが、にもかかわらず、存在と世界秩序の合理性への確固とした信頼によってささえられている。」
ローマ帝国没落のさなか、キリスト教思想形成期に生きたアウグスティヌスと、中世キリスト教界の円熟期に生きたトマス・アクィナス――対照的な個性の相違をもってヨーロッパ精神史に聳えるこの二人の思想家が目ざしたものは何であったのか。中世哲学史の碩学による本書は、テキストに即して両者の思考過程をたどりつつ、現代におけるその意義を描き出し、キリスト教ヒューマニズムを基調とする中世思想への最良の道案内となっている。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。