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1987年8月、新日鐵と日本製鋼所の企業城下町・室蘭の「現場」に筆者は初めて立った。それに先立つ同年2月、新日鐵は日本の産業構造の歴史的転換ともいえる合理化案を発表、全国の高炉を大幅に削減した。特に室蘭製鐵所については、四基の高炉のうち唯一残った第二号炉をも休止するとされ、現地の関連中小企業に不安が広がっていた。
北海道の人口は1900年の約98万から、100年後の2000年には約568万とおよそ6倍に増加したが、1995年をピークに人口減少と高齢化の過程に入っている。他方、1900年には4万人強に過ぎなかった札幌市の人口はその後一貫して増加し、いまや195万人(2015年)の大都市に成長した。
この間、かつて北海道の基幹産業であった炭鉱と北洋漁業は大幅に減退、また鉄鋼の室蘭、造船の函館、製紙の苫小牧などの企業城下町は構造的な不況の中で苦しんできた。このうち苫小牧にはトヨタ自動車北海道が進出し、近年ではその事業が軌道に乗り、本州方面から関連諸企業が進出、地場企業の一部も参入するなど、新たな可能性も感じられる。
基幹の農畜水産業では、優れた素材を本州に提供するばかりではなく、課題だった6次産業化等による高付加価値化へ向かう動きが加速している。さらに、大都市となった札幌には人材も集まり、新たな事業が登場しつつある。
だが、それ以外の地域は急激な人口減少と高齢化が著しく、産業も縮小している。人口、産業ともに札幌大都市圏への一極集中が激しい。働く場がなければ人は暮らせない。人材がいなければ産業も企業も起きない。北海道が成熟社会の中でより豊かになっていくためには、各地の人材育成、地域産業の振興が最大の課題である。
本書ではこのような問題を地域産業の「現場」からすくい上げ、北海道の産業集積と地域産業社会の今後の課題と可能性を論じていく。(せき・みつひろ)
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