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従来の研究はブルゴーニュ公の北方政策で獲得した低地地方が主流だったが,本書ではフィリップ・ル・ボンによる1420年頃から四半世紀に至る領地の経営と財政を考察し,宮廷や戦争を支えていた財務基盤を明らかにする。
租税については,地代と間接税収入は1420年代後半をピークに下落していくが,それを補うために御用金や借入金がたびたび課せられた。それらの徴税業務を担った勘定役は世帯調査や実態を把握して住民の不満に対応した。かれらが税の収奪者ではなく,資金融資ネットワークの主体的運営者として機能したことを明らかにする。
通貨政策では,国王貨幣の委託製造で莫大な利益を得るとともに,金銀の含有量を操作するインフレやデフレの政策を通して貨幣は高品位で安定したが,その反面,財政の弾力性は低下した。
首都を持たず連邦制を構成していた統治機構については財務管理の観点から検討される。公領に設置された諮問会と会計院の高い信頼を基に,それらを核として各領邦間の対等で領邦の特性を活かした自立的相互協力ネットワークにより情報と資金が提供されたことを解明する。
本書は会計史料や法史料500点2万枚を体系的に整理・分析し,公家の財政と金融政策の関連を解明して,初めて領邦経営の実態に迫った画期的業績である。
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